仏教のことば:「律(りつ)」

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律(りつ)

釈迦が弟子たちを誡めた規律のことです。

サンスクリットのビナヤvinayaの訳。毘奈耶と音写。僧尼の守るべき生活規律で,罰則を伴う他律的なもの。また律を記録した文献もいう。最古の文献はアショーカ王の法勅。《大蔵経》中にも〈律蔵〉として集められている。律蔵中の諸本が各部派によって伝承されるうちに差を生じ,四分律,十誦(じゅうじゅ)律,五分律,摩訶僧祇(まかそうぎ)律などの別がある。大乗仏教では戒本を大乗律と称することがある。
出典 株式会社平凡社

律とは僧侶の法律

「律」とは、釈尊が僧侶に対してのみ定められ、今も僧侶であるならばすべからく行うべき、罰則を伴う禁止事項や行事規定です。

僧侶であるならば誰でも、必ず遵守しなければならない「律」は、一般に具足戒[ぐそくかい]、略して具戒[ぐかい]と言われることがあります。

まず具足戒とは、「得ること」を意味するサンスクリットならびにパーリ語の[ウパサンパダー]の漢訳語で、仏教では「(比丘・比丘尼が必ず守らなければならない、完全な)法律・行動規定」、または「比丘(比丘尼)としての性を得ること」を指す言葉です。

また、律は二百五十戒や大戒、あるいは声聞戒[しょうもんかい]などと呼称されることもあります。

二百五十戒というのは、律には代表的なものとして、およそ250ヶ条の罰則を伴う禁止事項や行為規定があることからこう言われます。

戒律は、各個人に関わる「戒」(かい)と教団規則の「律」(りつ)で「戒律」(かいりつ)です。お経では「律蔵」(りつぞう)です。「戒律が守られえると教えが保たれる」のが理由で、仏教僧団ではじめて結集(けっじゅう)したときにまとめられました。

ブッダ滅後すぐ、マハーカッサパ長老が500名の阿羅漢(修業完成者)を集めた第一結集で仏教徒が守るべき戒めを「律蔵」(りつぞう)にして整備しました。

出家者の戒律は「パーティモッカ・波羅提木叉」と呼ばれます。別解脱(べつげだつ)や具足戒(ぐそくかい)ともいわれます。

律には、それが法律であるという性質上、当然のことながら、僧侶の精神的行為までを制限する条項など存在していません。

僧侶は律に則った生活を送ることよって、少なくとも身体と言葉の行為は、おのずから悪しき、俗な卑しき行為から離れていくようになります。

僧侶は律を守ってさえいれば、心が清らかになって悟りが得られる、などと言うことはありえません。

悪しき心の働きを離れるためには、経典と論書を学習し、その上で止観[しかん]という仏教に特有の冥想を行って、徹底的に心身を観察、その本質を洞察。モノの無常なる真実のあり方を見つめて、智慧を磨いていかなければならないのです。