仏教のことば:「転読(てんどく)」

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転読(てんどく)

経典の最初から終わりまで全部を読む真読(しんどく)に対し、経の初・中・終の数行だけを読むことです。

経題や経典の初・中・終の数行だけを略読すること。
大部の経典、特に「大般若経」600巻について行われます。

「大般若転読(だいはんにゃてんどく)」とは
大般若経600巻を短時間に読み上げる法要。
そのために,たとえば30人の職衆(しきしゆう)に20巻ずつ分担させるなどしたうえ,転読という速読法を用いる。
転読は,巻物仕立ての経を転がしながら目をとおすことから出た言葉だが,法要には折り本を用い,表裏の表紙を両方の手で支え,経巻を右または左に傾けながら本文の紙をぱらぱらと一方へ落とすようにする。
そのとき,経題だけは毎巻大声で読み上げる。
この転読を中心とし,これに導師の〈経釈〉を加え,さらに〈表白(ひようびやく)〉〈神分(じんぶん)〉等を前置して法要を構成する。
出典 株式会社平凡社

「転読大般若」とは、『摩訶般若波羅蜜多経(通称:大般若経)』の経文を読むことにより、その功徳をもって、世界の平和や各参列者の平安などをご祈祷申し上げる法会のことです。

『大般若経』は、『西遊記』にも出てくることで有名な三蔵法師玄奘(602~664)が、最晩年になってから4年余りの年月をかけて配下の訳経僧たちとともに翻訳した、あらゆる仏典の中で最大規模を誇る経典です。
字数は約500万字、全部で600巻となります。

『大般若経は、大乗仏教の空思想にもとづく般若思想を記録したものであり、同経中では、全部で十六の場所において釈尊が法を説かれています。
また、玄奘三蔵はこの訳出を終えてすぐに亡くなってしまいましたが、自分の生存中に経典の翻訳が終わったことについて、諸仏や龍天の助けがあったと述べたことから、この経典が国家や民衆を守ってくれると信じられ、「大般若会(だいはんにゃえ)」の成立となりました。

大般若経は、六百巻にも及ぶ膨大な量をもつ経典で、数ある般若経典を集大成したものです。

奈良時代から国家安寧(あんねい)のための読経にしばしば用いられ、くだっては各地の民俗行事にも取り入れられています。
現在でも奈良・薬師寺の大般若会(だいはんにゃえ)における転読(てんどく)が有名です。

「般若」というのは、大乗仏教の菩薩が重んじる「六波羅蜜」という徳目の一つの「般若波羅蜜」のことです。
これは、「智慧の完成」を意味します。

「転読」の方法は、時代によって変遷があり、当初経典が「巻物」であった時代には、題名と、中間と、末尾のみをめくって読んだそうです。
その後、現在のような「折本」が出来てくると、左右や前後に振るようにして転読としました(一説には、経文に節を付けて読むことを「転読」とする見解もあります)。
この転読の際に出る風に当たると、一年間は無病息災になるといわれています。

なぜ経本を読むのでしょうか?

それは我々自身が良い功徳を得るためです。