仏教のことば:「作務(さむ)」

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作務(さむ)

禅宗で、自給の僧院生活に必要な日常作業のことです。
禅寺では師も弟子も生活に必要なあらゆる種類の勤労雑役に従うことを尊ぶ。


【雲水】より

…座禅をくみ,入室問法(につしつもんぽう)(独参。修行者が1人で師の室中に入って教えを仰ぐこと)し,提唱(宗旨の大要を提起して説くこと)をきき,作務(さむ)(採薪や掃除等の労務)を行い,托鉢(たくはつ)(行乞(ぎようこつ))をする。臨済禅での独参は,雲水が師から公案をもらい,その所解を呈するところであり重視される。…

※「作務」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について

作務

禅寺では、修行僧が集団的に定住生活をするようになったので、修行僧による自給自足が原則となりました。

庭掃除から建物の修繕まで、修道生活と寺の維持に必要な一切の仕事を修行僧が行います。その仕事を作務といいます。

作務は、世間でいう作業や労働とは少し異なります。作務は生活の為ではなく修行なのです。

特に禅の世界では、修行者たちが肉体労働をすることによって、さとりが観念的に終わったり、現実と遊離しないように、作務が定められています。

お寺という修行の場を常に神聖なる精紳修養の場として整え、その中で、そうじという修行を通して自らの心をみつめ悟りを高めようと努力しています。

作務(さむ)とは、元は禅宗の修行法です。
具体的な内容としては日々の雑用、主に掃除などが挙げられます。
特に重要視されるのが掃除です。
お釈迦様の弟子に、チューラパンタカという人物がいました。
自分の名前も書けるか危ういとされるほどの頭脳の主だったチューラパンタカは、経文を覚えることができませんでした。
あまりに出来がひどかったので、共に仏僧となった優秀な兄からは見捨てられます。
しかし、お釈迦様は見ていました。
「経文は良いから、庭掃除をしなさい」と語りかけたのです。但し、只掃除をするのではなく「塵を取る、垢を取る」と唱えさせます。
頭は良くなかったもののその分純粋だったのでしょう。
素直に掃除を続けるうち、チューラパンタカは優秀だった兄よりも先に悟りを得ました。その内容とは、呪文の通りです。
塵や赤は煩悩や迷い。それを取れば、真理が見えると言うもの。心を込めて掃除をすれば自然と気持ちもさっぱりしますし、掃除が効率的な修行法とされているのもうなずけます。

作務衣

作務衣は、禅僧が作務に適するように僧衣を改良したのが始まりといわれています。

禅宗で始まった作業着

禅宗の寺で、僧が日常の雑事=作務を行う時に着る服を作務衣といいました。作務衣は当初、作務を行う時に着るもの全般をさし、特に形が決まっていませんでした。

最初は上衣が膝くらいまであり、ズボンにはマチがあって道場袴に近かったようです。今日のような形の作務衣は、戦時下で女性が使用した、もんぺを参考にして生まれたもの、といわれ現在の姿は以外に歴史が浅いのです。

和の雰囲気があり、着やすさと便利さから急速に広まり、各宗派はもとより一般でも用いられるようになりました。寺院用は着物の袖を納めるため、一般のものよりも袖が太く出来ています。

作務とは「目的をもって、美しい心でとりくむ環境整備」といいかえてもよいかもしれませんね。

禅寺の修行僧は、作務を通して何を得られるか。

それは、清らかな心と、悟りという名の幸福です。

すなわち、やらなければならない労働としてのそうじから、美しい心でとりくむ「作務」に切りかえたならば、そこには無限に広がる幸福を約束されたことになると思います。