仏陀(ブッダ)の生涯(5)仏陀(ブッダ)の出家(1)

スポンサーリンク

死というものがあまりにもあっけなく訪れる

ラーフラ王子は、日を重ねるごとに愛くるしくなりました。

ヤソーダラ(耶輪陀羅)妃の、夫と子を慈しむ愛情は一層深まりました。

第二夫人のムリガジャーには、妊娠の気配はませんでした。

この頃、太子は第三夫人ゴーピカーをめとりました。

第二夫人と第三夫人は、時に猛烈な嫉妬心を剥き出しにして太子にぶつかってきました。

太子は、愛するがゆえに、自らや愛する相手を傷つけるものの実体について悩みました。

太子が長老会議に出席して7年経った頃、大国のコーサラ国とマカダ国が国境紛争を起こし、戦争となりました。

シャーカ族も、コーサラ国のパセーナディ大王の動員命令を受けて、武装兵団をガンジス川の国境近くへ派遣しました。

小国の増援部隊はすべて最前線に配備され、大国の部隊の盾がわりに使われました。
一ヶ月ほどの戦闘で両国は講和し、派遣部隊は本国へ引き上げました。

シャーカ族の部隊は二百名ほどの小部隊でしましたが、死傷者は数十名に及びました。

何の為の闘いだったか、戦闘に参加した将兵にはまったく分からりませんでした。

シュットダナ王にしても彼らの武勇を賞し、その働きをねぎらうことしかできませんでした。
何の利益も無く大きな被害を受ける小国の悩みを、シッタルダ太子は身をもって体験しました。

太子は、三つの宮殿を泊まり歩くことを止め、林泉の樹下に座禅して、沈思黙考する日が多くなりました。

シッタルダ太子は、心を苦しめる悩みを解決するには、出家して修行者になるしかないと思いましましたが、決心がつかず29歳となりました。

王宮を捨て、ラーフラ王子やヤソーダラ(耶輪陀羅)と別れ、孤独の旅に出たところで、恩愛の絆を断ち切ることができるだろうか。
太子は、日々悶々と悩んでいました。

愛するヤソーダラ(耶輪陀羅)と合い、太子の懐に飛び込んでくるラーフラ王子のあどけない話しに耳を傾ける。

ある時王子は木の下で瞑想にふけっていました。
目の前で農夫が田圃を耕し、その鍬に驚いた虫が地面の外に出てきました。
するとそれを見つけました。鳥が虫を捕って食ってしまいました。

ところがその鳥が虫を捕って空に上ると、鷲がやってきて、その鳥を捕らえ、食ってしまいました。

若き王子は死というものがあまりにもあっけなく訪れるものであることを思い知り愕然とします。

この幸福な生活の陰に、病気が、老衰が、死が、隠されていると感じます。

人間の”四苦”「生・老・病・死」です。