普請は字の如く「普く 請う」という語で労役に携わる
「家の普請」といえば、家の改築か新築のことをいいます。
「道普請」といえば道路工事。
建築や工事を指す言葉ですが、事の起こりは仏教の地インドに求めることができます。
インドの僧団では、すべての僧を集めて掃除をしました。
普請の基本条件は、この多くの人の協力、ということにあります。
やがて中国の禅林ではこの言葉が、僧を一堂に集めて作務労役に従事することを指すようになりました。
「普」とは、あまねく、という意味です。
それに「請」がつくのだから、みんなに呼びかけて協同事業を興す、という意味に解釈できます。
普請は字の如く「普く 請う」という語で、禅宗の寺院において、仏誕生会即ち花祭の花摘をはじめ、書籍の虫干、茶摘、歳末の大掃除等、広く人々に請い、作務労役を依頼すること、あるいは院内の修行者が総出で労役に携わるとの意味でした。
唐の末から宋にかけての頃、禅宗寺院で
「共に作すはこれ普請と謂う」とあります。
この言葉が日本においても奈良平安の頃から、仏閣神閣の作事、また道路・架橋工事など、住民総出で行う公共事業や共同作業の意に用いられるようになりました。
さらに進んで土木工事そのものにも使われ、家普請等建築工事一般にまで広がって現在に至っています。
やがて日本では室町期に入って建築用語に用いられるようになりました。
近世後期になっても、山片蟠桃の『夢の代』に、
普請はあまねくこうと書けば、
人をたのみて手伝を受るなり。
-中略- 大工日雇を雇ひて
造作するはこれ建立なり、普請にあらず。
とあります。
これも、建築にはたくさんの人間が秩序正しく協力しあう必要性のために転用されたと考えられます。
大規模な建築や土木工事には、多くの人々に協力を呼びかけ、秩序正しく事を進める必要があるのですが、そうした基本的条件のことを普請と解釈できます。
江戸時代の武士の役職名「請方」「普請奉行」は、もっぱら建築土木事業の責任職名を指す言葉であり、そのころから一般に、普請イコール建築土木のイメージが浸透したものと思われます。
基はといえば、「普請」は仏教の用語で、お寺のお堂や塔を建築するときに、一般の人々に広くお願いして建築の労役をして頂くことを指す言葉でした。
「多くの人の合力を請う」という普請の言葉を、震災復興や社会活動等多くの場面で見直す時ではないでしょうか。