東岸(とうがん)
西岸の対。
西岸とは西方極楽浄土のことです。
彼岸のことです。
従って東岸は此岸、裟婆のこと
彼岸は季節を表す言葉ではありません。
日ごろ、「あの世、この世」という言葉を使います。
「この世」はもちろん現実世界であり、「此岸(しがん) 」です。
此岸は煩悩渦巻く「四苦八苦」の世界です。
限りある苦悩の世界をいとい離れて求められるのが、「あの世」すなわち「彼岸」なのです。
彼岸は限りない命と智慧に満ちあふれた世界です。
阿弥陀さまの浄土、西方極楽浄土こそが、願い求めゆくべき彼岸なのです。
彼岸という仏教行事をとおして、今を生きるこの私の命がご先祖から永々と伝えられて来た「命のバトン」を受けて生きています。
善導大師が説かれた「二河白道(にがびゃくどう) 」のお話
一人の旅人が、東から西への旅路を歩いています。
突然前方に河があらわれました。
立ち止まって後を振り返ると、盗賊や猛獣・毒蛇が襲いかかってきます。
旅人は河の間に小さく細い白道を見つけました。
しかし白道の左の方には猛火が燃えさかり、右手は急流が押し寄せてきます。
進むも死、戻るも死と、全くの絶望状態です。
旅人は躊躇していました。
すると、迷っている旅人の耳に、東の岸から声が聞こえて来ました。
「決心してその白道を歩みなさい。
死ぬようなことはありません。
そこにとどまっていたら死ぬでしょう」と、そしてさらに進もうとする西の岸からも、それに呼応するように「心から信じてすぐこちらに来なさい。
私があなたを守ってあげよう。
水の河、火の河を恐れることはありません」という声が響いてきました。
その声に励まされて前進する旅人ですが、背後から盗賊や猛獣・毒蛇の声が。
「早く引き返しなさい、その道は通れない、行けば死ぬだけだ。
我々はあなたを殺したりはしない、引き返しなさい」
旅人はその誘惑に乗ることなく白道を進み、ついに向こうの岸に到達することが出来たのです。
東岸は娑婆、西岸はお浄土です。
盗賊や猛獣・毒蛇は私たちの心に住む煩悩を、火の河は怒りの心、水の河は貪りの心を意味しています。
白道は彼岸に到ろうとする清浄な心、東岸の声の主はお釈迦さま、西岸からのそれは阿弥陀さまの呼び声なのです。