仏教のことば:「中尊(ちゅうそん)」

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中尊(ちゅうそん)

仏壇中央にまつられる尊像。
「中尊」の意味は一群の仏像のうち中心をなすもののこと。
脇侍などと区別していう語。阿弥陀三尊の阿弥陀如来、密教五仏の大日如来、五大明王の不動明王など。

中尊と本尊の違いについて
「それはご本尊の事ではないか」とちょっとした疑問がでてきませんか。

中には中尊とご本尊が一緒の場合もあります。

中尊と本尊は根本的に違うものです。
本尊はただ一体で中央に構えていることもあります。

本尊とは、各宗派で最も崇拝すべき仏を示すのです。
この本尊は、時折両脇に脇侍(きょうじ)や眷属を従えると中尊と呼ばれるようにもなります。

本尊(ほんぞん)とは、仏教寺院や仏壇などに最も大切な信仰の対象として安置される仏像・経典・仏塔、お守りとして身辺に常時携帯されるもので、仏や菩薩などの彫刻・絵画・曼荼羅(まんだら)・名号などをいいます。

つまり、単体で祀られている時は本尊、脇侍や眷属の中心にいると中尊と呼ばれるわけです。

脇侍というのは、中尊の両脇や周りを固める菩薩、或いは童子のことです。
その役割は中尊の補佐で、言ってみれば敏腕秘書。向かって左を左脇時、右を右脇侍と言います。
中尊から見ると右側が左脇時で左側が右脇侍となります。

お釈迦様を中心とした釈迦三尊像では左脇侍が文殊菩薩で右脇侍が普賢菩薩になります。
この組み合わせが多いですね。

興福寺中金堂や法隆寺金堂などでは薬王菩薩、薬上菩薩が脇侍です。
文殊菩薩は智慧、普賢菩薩は修行を象徴しています。

目的ごとに特定の尊格を本尊として行う修法を別尊法といい、別尊法を行う際に用いられる、個々の尊格を中心として構成された曼荼羅を別尊曼荼羅といいます。

別尊曼荼羅は特定の尊像を中心に配し、周囲にこの尊に関わる尊格を配します。「特定の尊像」には経典に説かれる主要なほとけがほとんど含まれるので、別尊曼荼羅は非常に多くの種類があり、それらは以下の7系統に分類されます。

●如来部別尊曼荼羅
如来を中尊(ちゅうそん)として描かれた曼荼羅で、「釈迦曼荼羅」、「阿弥陀曼荼羅」、「仏眼(ぶつげん)曼荼羅」などがあります。

●仏頂部(ぶっちょうぶ)別尊曼荼羅
如来は三十二相といって、32の外見的な特徴を持つとされますが、その中でも特に頂髻相(ちょうけいそう・頭頂の肉が盛り上がる)は諸相中でも特に優れた功徳を持つとされ、尊格化されたものが仏頂尊(ぶっちょうそん)です。仏頂部曼荼羅は仏頂尊を中尊とし、「尊勝曼荼羅」、「一字金輪(いちじきんりん)曼荼羅」、「大勝金剛曼荼羅」、「摂一切仏頂(せっいっさいぶっちょう)曼荼羅」などがあります。

●諸経部別尊曼荼羅
経典や儀軌をもとに描いた曼荼羅で、そのため内容的に複雑な構造を持ち、種類も多く、当麻曼荼羅に代表される浄土経変相図や釈迦八相図等の仏伝図(ぶつでんず)もこれに含まれます。代表例としては大乗経典に基づいた「法華曼荼羅」、「仁王曼荼羅」、「請雨曼荼羅」や密教経典に基づいた「理趣経(りしゅきょう)曼荼羅」、「孔雀経(くじゃくきょう)曼荼羅」、「宝楼閣(ほうろうかく)曼荼羅」などがあります。

●菩薩部別尊曼荼羅
観音菩薩を除く菩薩を中尊として描いた曼荼羅で、「弥勒曼荼羅」、「八字文殊曼荼羅」、「五大虚空蔵(こくうぞう)曼荼羅」などがあります。

●観音部別尊曼荼羅
観音菩薩は多種多様に変化するという特徴があり、重要な存在であることから観音菩薩を中尊とする曼荼羅は菩薩部から独立して扱われ、代表例としては「聖観音曼荼羅」、「千手観音曼荼羅」、「七星如意輪(しちせいにょいりん)観音曼荼羅」などがあります。

●忿怒部曼荼羅
明王尊を中尊として描いた曼荼羅で、「安鎮曼荼羅(中尊は不動明王)」、「愛染曼荼羅」、「大威徳曼荼羅」などがあります。

●天等部別尊曼荼羅
天部尊を中尊として描いた曼荼羅で、「北斗曼荼羅」、「歓喜天曼荼羅」、「荼吉尼天(だきにてん)曼荼羅」、「十二天曼荼羅」などがあります。