凡夫(ぼんぶ・ぼんぷ)
六道を輪廻する者のことです。
仏教用語。
愚かな煩悩を断じていない衆生をいう。
サンスクリット語ではプリタクジャナといい,必栗託きつ那 (ひつりったきつな) と音写され,異生 (いしょう) と漢訳される。
異生とは,種々の煩悩によって種々な業果を受け,種々な世界に生じるという意味である。
部派仏教でも大乗仏教でも聖者となる以前の段階を凡夫と呼んでいる。
出典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
仏教用語で「凡庸な士夫」、言い換えると仏教の教えを十分に理解していない者、愚か者のことです。
詳しく言うと、煩悩と迷いが消えず欲望も多く、怒りや妬みなど負の心情に満ちている者のことです。
一般用語では、普通の平凡な男のこと、凡人のことを言います。
凡夫は、仏教用語では異生(いしょう)とも言います。
類語として仏教を含む宗教的な用語としては、ごく一般的な人でくだらないことしか考えない「俗人(ぞくじん)」、平凡でありきたりな才能や素質しかない人を表す「凡骨(ぼんこつ)」があります。
俗人から派生した言葉で「凡俗(ぼんぞく)」があり、煩悩にとらわれた人という意味で使います。
現代的な言い回しでは、普通の人と意味で「凡人(ぼんじん)」とも言いかえられます。
凡夫ではない人、つまり仏教の教えについて理解している人という意味で「内凡(ないぼん)」、「外凡(げぼん)」、「底下(ていげ)」という凡夫と区別する対義語に当たる用語があります。
それぞれ、仏教修行の最初の段階に入り聖者の仲間になりうる人、それ以前の段階の人、さらにその前の段階の人を指します。
現代用語としては、凡夫(凡人)でない人と言う意味で、非凡人や偉人、英雄などと言い換えることも出来ます。
地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天・声聞・縁覚・菩薩・仏の十界のうち、業(ごう。カルマ)によって六道(ろくどう・りくどう)を転生輪廻(りんね)する(輪廻から出ていない。悟り・解脱(げだつ)をえていない)地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天を衆生という。
凡夫はこのうち人間界の衆生にあたります。
仏教における人間観を示す重要な用語である。
普通、「どうせ私は凡夫だから」と自分を卑下して使う。
本来は、サンスクリット語の(プリットハグジャナ)の漢語訳である。
一般的にはインドのカースト制度における「低い階級の人」を指すが、仏教では凡夫、凡愚、凡人と意訳されたり、異生(別々の生まれ)と直訳され、仏教に出遭う以前の「自らの煩悩に迷わされてさまざまな生き方をしている人」を意味する。
単に自らを卑下するのではなく、仏法に照らされて自己の愚かさを自覚した人が、自らを「凡夫」と呼ぶのです。