仏教のことば:「異安心(いあんじん)」

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異安心(いあんじん)

宗祖の教えにそむいた教説をとくことです。
真宗ではとくに安心を重視しているので、異なった安心の説をとくことです。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

正統説とは異なった見解、異端説をいう。安心とは心が安定し不動を得た境地。ことに親鸞(しんらん)を開祖とする真宗で使う語。親鸞在世中すでに、一念か多念か、有念か無念か、信の一念か行の一念かなどのいさかいがあり、蓮如(れんにょ)のころには、秘密裏に教えを伝授する「秘事法門(ひじぼうもん)」、この世で成仏(じょうぶつ)できるとする「一益(いちやく)法門」、「施物頼(せもつだの)み」などが異端として指摘されている。1763年(宝暦13)に起こった三業惑乱(さんごうわくらん)は異安心の事件として著名である。

世界大百科事典 第2版の解説

仏教各宗派において,祖師の伝承にもとづく正統説と異なった見解,領解(りようげ)をいう。異流,異義,異計,邪義ともいう。とくに浄土真宗では,正統の安心を重んじ,異安心の排除に熱心であった。真宗における異安心は,すでに親鸞の在世中,その門下に〈一念・多念〉〈有念・無念〉の論争があり,〈誓名別執〉〈造悪無碍(むげ)〉〈専修賢善〉等の異義があった。本願寺を開創した覚如は,親鸞の正意の発揮につとめ,仏光寺系の〈知識帰命〉や唯善の〈無宿善往生〉の異安心を排した。

正統説とは異なった見解・解釈。ことに親鸞が説いた真宗の安心とは異なった異端説をいう。

親鸞当時すでに一念他念の諍いがあったが、蓮如のころに至って最も多くこの異端が現れた。十劫秘事・一益法門・施物だのみなどがそれで、その後、地獄秘事・御倉法門などの秘事が現れた。

事件としては宝暦十三年(1763)に起こった三業惑乱が最も著名。(仏教語大辞典)

真宗における正当な教義とは異なった理解にもとづく信心のこと。

異義・異解・異計などともいう。親鸞在世時から存在し、蓮如の時代にはくせ法門などと呼ばれた。

その内容は多岐にわたり、親鸞の御消息、『歎異抄』、覚如の『改邪鈔』、蓮如の御文章などから知ることができる。

江戸時代には本願寺派において三業惑乱が起こり、学林の能化が主張した三業帰命が異安心と判じられた。(浄土真宗辞典)