仏教のことば:「甘露(かんろ)」

甘露(かんろ)

仏教でいう諸天の神の飲料水。
蜜のように甘く、これを飲めば不老不死になると言われます。
仏の説法のことをもいいます。

(1) サンスクリット語アムリタ am?taの訳語で,不死,天酒とも訳される。インド神話では,諸神の常用する飲物で,蜜のように甘く,飲むと不老不死になるという。酒あるいは美味な飲物に対しても用い,仏教の教法にもたとえる。 (2) 中国伝説では,王が仁政を行うと,天がその祥瑞として降らすという甘味の液体。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

甘露ということばは、仏典などにもしばしば現れ、ありがたい如来の説法を「甘露の法雨」と称したり、涅槃(ねはん)にいたる門のことを甘露門などといったりします。

伝統的な漢語の世界での甘露とは、為政者が善政を敷き、天下泰平になったとき、天が降らせる露のことで、中国古来の伝説によると、“甘露”とは名君が仁政を行うと、天がその瑞兆として降らすという甘い霊液のことだといわれています。

金にまみれ、私腹を肥やし、自分達の利害を第一に考えるような政治家の群がる国ではとても降りそうもないように思えますね。

『漢書』には、宣帝という皇帝の時、この甘露が何度も天から降ったことが記録されており、この瑞祥によって甘露という年号に改元さえされたといいます。

また、インドでは梵語で“アムリタ”といい、神々の飲料で、香気があり、味は蜜のように甘く、これを飲めば苦悩が去り、不死の霊薬とされている。これには死者をも復活させる霊能があると言い、仏の教法が衆生を救うたとえとされているといいます。

仏教が中国に伝わった当初、さまざまな仏教語(サンスクリット語)を漢語に翻訳する際、二つの方法があったようです。

ひとつは、「仏陀」や「卒塔婆(そとば)」のように、もとの音をそのまま漢語に移す音写と呼ばれる方法。

もうひとつは、この甘露のように、伝統的な漢語の中から類似した語をえらんで置きかえる意訳という方法ですね。

こうした意訳語からは、何とか外来の教えである仏教を、中国の人々の間に根付かせようと苦労した跡がうかがえますよね。

仏教ではこの「甘露」を「法味」(仏さまの教えの味わい)と捉え、悟りや仏法を表す言葉としても使用されます。
わたしたちは甘露によって有り難く生かされている存在だと思います。

だからこそ自分自身も甘露を生み出すことができる存在になれるよう、精進していきたいものです。