加行(けぎょう)
正行にたいしていいます。
準備段階としての行。
前行。
密教で灌頂・授戒・伝授などを受ける前に行う特定の前行のことです。
禅宗・浄土宗などでは付法・受戒の際にその前段階として修行が行われる。
また、後天的な努力によって得られたものもいいます。
加行は、プラヨーガというサンスクリット語の訳で、功用を加えて行うという意味です。加行は、さらに高い段階へ向かって努力精進をする、準備となる修行です。
代表的な加行は四度加行です。四度加行は、十八道、金剛界、胎蔵界、護摩、の四種類で構成されています。
それぞれに前段階の前行と呼ばれる部分と、正行と呼ばれる本来の部分があります。
この前段階の部分が加行で、四度加行全体も加行と呼ばれるのは、四度加行が伝法者となるために必要な、前段階の修行のためです。
四度加行を修めたものが伝法灌頂を受けられ、これによって次の者へ法を伝授する資格を得ます。
別の言い方をすると、加行は、秘伝を授けるに足る器量や能力が有るか否か、を見極める行といえます。
修行の内容
四度加行は密教の初歩的段階ですが、四度加行を受ける前に、ある程度お経を読むとか、外形的な儀式に関するものは修得しておく必要があります。
宗派や流派によって四種類の習う順序は異なりますが、十八道が最初であることは共通しています。また、この四つを一連のものとして授けることも変わりありません。
四度加行は口伝を重んじるため、前行の部分で次第(何をするか手順を書いたもの)を書写し、後半で読み方を練習したり、印の結び方を覚えたりして、正行に臨みます。
四種類の内訳は・・・ 十八道は仏様を迎える18の作法です。
金剛界と胎蔵界は、それぞれ金剛頂経・大日経というお経に基とづいての実習です。この両者は密教の根本をなすものなので、これを修めれば密教を一通り修めたことになります。護摩は四度加行の最終段階、仕上げの行となります。
日数
当初は四種類とも、前行が100日、後半が100日で、後半の最後の21日間が正行でした。全体で(100+100)×4=800日とされていました。
しかし乱世の時、日数が100日から50日へと半減し、その後、時代とともに短縮化されてゆきました。
十八道、金剛界、胎蔵界それぞれ前行が50日、正行7日。護摩は前行21日、正行7日で、(50+7)×3+(21+7)=199日。
四種類とも21日づつで満行とする。
その他、全体で170日、150日、60日、などもあります。
また続けて行わず、春秋二季にわけて行い、四度加行は2年をもって満ず、とするものや、四種類をまとめて前行・加行と称して二分して行う場合もあります。
時間の短縮にともない、投花得仏で決める部分を省略して固定化したり、書写していた次第が印刷物になったりしています。
四度加行では、仏様と私たちを繋ぐ方法、仏様とお話をする方法を身につけていくのです。
具体的に言うと、護摩法などの実際の修法を学んでいきます。
この期間が、多くの僧侶にとって、肉体的にも精神的にも最も苦しい期間の一つです。
四度加行によって、修行僧は、「自分のため」だけではなく、いつか、「誰かのため」のお願いを橋渡しすることができるようになっていきます。