比丘(びく)・比丘尼(びくに)
出家して具足戒を受けた男子が比丘、おなじく戒を受けた女子が比丘尼。
比丘は、インドの諸宗教を通じて托鉢する修行者のことで、仏教でもこの呼称を取り入れたのである。比丘・比丘尼になるためには、成年に達しなくてはならないと規定される。
比丘
正式な男性出家修行者
比丘とは、「(食を)乞う者」を原意とする、サンスクリット[ビクシュ]またはパーリ語[ビック]の音写語で、仏教では、正式な男性出家修行者のことを言います。
比丘はまた、漢語では大僧[だいそう]と呼称される場合もあります。また、サンスクリットの発音により近い音写語である、[びっしゅ]という呼称が用いられることもあります。
比丘になるためには、誰でも例外なく、比丘の二百五十戒や具足戒、大戒などと言われる、およそ250ヶ条からなる律を受けなければなりません。
「20才以上である」、「父母の許しを得ている」、「負債がない」、「官人でない」、「人間である」、「感染症にかかっていない」、「性的不能者ではない」、「両性具有者ではない」など、他にも様々な条件を必ず満たしている必要があります。
律には、比丘として「絶対に」やってはならない四ヶ条があり、これを犯せばただちに僧団から永久追放されます。
その四ヶ条とは、「いかなる種類、いかなる相手との性交渉」・「価値五銭以上の窃盗」・「殺人・殺人教唆あるいは自殺の奨励」・「宗教的虚言」です。現実的に最も維持するのが困難と言えるのは、「いかなる種類、いかなる相手との性交渉」をしないことと言えるでしょう。仏教は出家者の「性」について、大変厳しい態度をとるのです。
比丘尼
正式な女性出家修行者
比丘尼とは、サンスクリット[ビクスニー]」またはパーリ語[ビックニー」の音写語で、正式な女性出家修行者です。
また、サンスクリットの発音により近い音写語には、[びっすに]があります。
比丘尼になるためには、誰でも例外なく、まず式叉摩那[しきしゃまな]として二年間を過ごした後に、比丘尼の具足戒たる五百戒や大戒などと言われる、およそ350ヶ条からなる律を受けなければなりません。
比丘尼の場合は、八敬法[はっきょうほう]と言われる、つねに比丘を目上の存在として敬い、その指導を仰ぐべきことが定められた八ヶ条の規定を、終生守らなければなりません。比丘尼は、あくまで比丘の下部に位置づけられた存在なのです。
八敬法
1 出家後百年経ていようと、比丘には誰であれ礼拝しなければならない。
2 比丘を罵ったり謗ったりしてはならない。
3 比丘の罪・過失をみても、それを指摘したり告発したりしてはならない。
4 式叉摩那[しきしゃまな]として二年間過ごせば、具足戒を受けても良い。
5 僧残罪を犯した場合、比丘比丘尼の両僧伽で懺悔しなければならない。
6 半月毎に比丘のもとにて、教誡を受けなければならない。
7 比丘のいない場所で、安居[あんご]してはならない。
8 安居が終われば、比丘のもとで自恣[じし]を行わなければならない。
七衆(しちしゅ)とは、仏教徒を出家・在家、男性・女性とよって分けられた七つの立場の総称で、仏教徒全体を指して言う言葉です。
仏教徒には、まず出家者(僧)と在家信者(俗)という、二つの立場があります。そして、出家者は、年齢や性別などによって、五つの立場にわけられます。
男性出家者には、比丘(びく)・沙弥(しゃみ)の二つの立場があります。
女性出家者は、比丘尼(びくに)・式叉摩那(しきしゃまな)・沙弥尼(しゃみに)の三つです。在家信者は、男性を優婆塞(うばそく)、女性を優婆夷(うばい)と呼称します。
七衆ではなく、四衆(ししゅ)という言葉でもって、仏教徒全体を指して言うことがあります。
この場合は、比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷のことで、もって出家在家の男女全てを指します。
これは日本の中世から近世に限っての特殊な用例ですが、四衆はまた、寺院に起居する比丘・沙弥・近事(ごんじ)・童子(どうじ)を指す言葉です。