温めた石を腹に当てて、飢えをしのいだ「懐石料理」。
お茶の席につきものの「懐石料理」。
これが分かれていったのが「会席料理」。
本来は、簡素な食事を意味することばであり、そのルーツは仏陀(ブッダ)の時代にまでさかのぼることができます。
今でこそ日に三度の職ですが、当時の修行僧たちの食事は一日一回でした。
いくら修行といっても、これではつらいと思います。
そこで彼らは温めた石を腹に当てて、飢えをしのいだといいます。
つまり、石の温度を利用して、体温の低下、体力低下を防いだというわけです。
つまりは、懐に石を抱いた状態であり、それが簡素な食事の代名詞へとなっていきました。
この石のことが「薬石」と呼ばれています。
これが後には、お粥、あるいは夕食を指すことばへと変わっていきました。
懐石料理と会席料理の違い
高級と呼ばれている割烹や料理店、温泉地にある名旅館などでは、自慢料理として心を込めて手造りした「会席料理」、季節の旬の素材を活かした「懐石料理」というような表現しているのを見かけます。
私たちは「懐石」も「会席」も、実はあまりよく判らないで、何となく「懐石」の方が高級、あるいは手間のかかったもの「会席」とは一品ずつ順番に提供される和食、などと考えていることはないでしょうか。
実は、料理を提供する側の旅館や料理店でも、その定義は明確ではありません。
同じお店でありながら、懐石料理と称することもあれば、会席料理と称していることもあるようです。
いつのまにか「懐石」も「会席」も一品ずつお出しする、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちにお出ししますという料理の提供方法を表す言葉になっているように思います。
懐石料理と会席料理の違いについて
【懐石】
「懐石」という言葉は、禅僧が懐に薬石を入れ、空腹と寒さを紛らわしたという故事に由来しています。
茶の魅力を充分に堪能できるよう、茶を喫する前に空腹を癒すために適度の料理を食する、これが懐石料理の起源とされています。
つまり、一時しのぎ、茶の前に出す軽い食事というわけです。
したがって、お酒を飲んで懐石料理をお腹いっぱいにいただくのは、現代風の懐石料理で、本来のお茶を楽しむ前の料理は「茶懐石」として区分されて現存しているようです。
【会席】
「会席」は、最初は連歌や俳諧の席の料理でした。それが冠婚葬祭に用いる儀式料理や武士が食した本膳料理などの影響を受けて次第に変化し、いまでは酒宴の席の料理となっています。
「懐石」はお茶を美味しく飲むための料理、「会席」は酒を楽しむための料理と言えるようです。
ルーツ的には「懐石」と「会席」は違うのですが、それにこだわることなく、おいしくいただければ、それで良いようにも思えます。