仏教のことば:「回向(えこう)」

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回向(えこう)

自分の善行、功徳でもって、他人によい結果の生ずることを願うことです。
仏事を営み、死者の成仏を願うことです。

回向の意味(回向とは)

回向とは「回り差し向ける」という意味で、僧侶や自分が修得した善根の功徳を他に回し向けることを言います。

現在では、成仏を祈って死者を供養することを回向ということも多く、回向文(えこうもん)を唱えること、またその文章自体を回向という場合もあります。

つまり、死者の安らかな成仏を願って供養し、法要を行う事をさし、死者へ向けての読経や善行が自分の悟りの一助けとなると共に、死者の霊に向けて分け与えることで追善供養にもなることを意味しています。

浄土真宗では、念仏を唱えて共に救いの働きを差し向けて極楽へ往相しようとの願う事を「往相回向(おうそうえこう)」と呼び、極楽に生まれた人々が再びこの世で人々を救おうとし還り来たり力になることを願う事を「還相回向(げんそうえこう)」と呼びます。

回向文の多くは勤行、法要を行う際、読経の後に唱え、寺や各家で行われる仏事には死者のためだけでなく、縁のある人々に向けて回向を読み上げ、回向の最後には各宗の仏様の名前を唱えます。

回向を僧侶にお願いする際にお布施を渡す時の表書きには「回向料」とすることよりも、「御布施」または無地の封筒がよろしいでしょう。

功徳の転送

善行の結果の功徳を他に廻めぐらし向けるという意味で、廻向といいます。サンスクリット語の原語には、変化・変更・成熟・発展などの意味があります。

廻向は当初、布施をした功徳を家族に振り替えるだけでした。それが後の大乗仏教になると、対象が家族から家族以外にも拡大されます。むしろ、自己的なものより、他に振り向けることが、理想的な功徳になる、という考え方になります。

例えば、お念仏の功徳を、すべての人に振り向けて、共に極楽往生ごくらくおうじょうする、という考え方です。これから転じて、法事でお経を読み、故人の冥福を祈ることを、廻向と呼ぶようになりました。

矛盾

自業自得の考えからすると、廻向は矛盾します。そのため大乗仏教以外では、廻向は否定される傾向にあります。大乗仏教では、自分の利益と他人の利益、両方を兼ね備えることが理想とされます。

また、大乗仏教の中でも、浄土真宗を開いた親鸞聖人は独特な考え方をします。仏様から人々に対する廻向=他力廻向は認めますが、修行する人の廻向=自力廻向は認めていません。

廻向文えこうもん

法要の終わりの部分で読み上げられる文章です。その法要の功徳が目的のところへ廻向されるように唱えます。よく使われる代表的なものが次の文です。

願以此功徳 普及於一切 我等與衆生 皆共成佛道。
がんにしくどく ふぎゅうおういっさい がとうよしゅじょう かいぐじょうぶつどう

この功徳をもって、あらゆる事に対し、私たちが仏様の教えを実践できますように願います。