仏教のことば:「天(てん)」

スポンサーリンク

天(てん)

仏教でいう天は、三界にある諸天の天界のことです。
すなわち、人間界の上にあって、すぐれた果報を受ける者のみが住む世界。

天部は元々インドの神々だったものを護法尊として尊像化したため、さまざまな姿であらわされます。

もともとは古代インドのバラモン教(古代のヒンズー教)の神々でしたが、仏教に取り入れられ仏の守護神となりました。如来・菩薩の領域と人間との中間に位置する存在です。如来や菩薩、明王が人々を教化して救済してくれるのに対して、天部は仏やその教えを護り人々に現世利益の福徳を与えてくれるのです。

天部とは仏教世界の天上界(=天界,天上)に住み、仏様、仏法を守る守護神です。

また、天部の神様はそれぞれ私たちの生活に密着したご利益をもたらしてくれるとされ、天部信仰は古くから日本に根付いています。

天部とは、元々は仏教の生まれたインドで、仏陀の生まれる前から信仰されていたバラモン教やヒンドゥー教の神様などが仏教に取り込まれ生まれた存在がほとんどです。

天部のほとんど、仏の圧倒的な慈悲や力に屈服/感服して、仏教に帰依し、仏様(如来)や菩薩、明王と言った存在を守る神様になったとされます。

仏教の世界では、六道(六界)という世界に分かれています。

天道(てんどう|天上道や天上界):天部(神々)の住む世界
人間道(にんげんどう):人の住む世界。悩みや苦しみもあるが楽しみも感じられる世界
修羅道(しゅらどう):阿修羅が住む世界。常に争いや戦いがあり苦しみ怒りにあふれる世界
畜生道(ちくしょうどう):動物の世界。
餓鬼道(がきどう):常に苦しみ・悩む餓鬼の世界。食べ物が目の前にあっても口に運ぶと炎となって燃えてなくなり苦しみが続く世界
地獄道(じごくどう):常に苦しみに襲われる世界。

私たち人はこれらの苦しみや欲にまみれた世界を何度も繰り返し生きる生き物で、これらの苦しみや欲から脱することで、仏の世界に行くことができるとされます。

天部の神様も実は、そんな欲や悲しみ、苦しみなどもある六道の世界の住人ではありますが、天道という仏の世界に近いところの住人です。

この世は三界と呼ばれる世界に分かれ、六道の住人はそれぞれの三界で迷い悩む存在ともされます。

欲界(よっかい):欲望にとらわれ苦しみ悩む衆生のいる世界
色界(しきかい):美しい物・形にとらわれている衆生のいる世界
無色界(むしきかい):物などの美しさにとらわれなくなったがまだ迷いのある衆生のいる世界

この三界の中で迷い・苦しみ・悩む衆生の内、天部は無色界の住人で、この三界の中にある二十八の天界にそれぞれの神が住んでいると考えられています。

天部の神様は神様だが、私たち人に近い存在として見守ってくれる」と言われます。

天部の一例

■梵天
仏や菩薩を守護します。古代インドのバラモン教の最高神であり、万物の根源となるブラフマー神が仏教に取り入れられて梵天となりました。唐の貴人を模した礼服姿で、人間に近い姿や、顔が4つ腕が4本の姿であらわされます。

■帝釈天
雷を神格化したもので、英雄神です。仏教に取り入れられ、王者・王権を象徴守護尊の役割をになっているのです。

■吉祥天
毘沙門天の妃とされる功徳の女神です。起源は幸福の神で、ヴィシュヌ神の妃のラクシュミーです。

■弁財天
大河の名前が神格化された豊穣の神です。のちに音楽や芸能、福徳の神となりました。

■毘沙門天
現世利益の仏です。護国あるいは戦いの神として信仰されています。

■四天王
仏教世界の中心に位置する須弥山の四方に配され護っている仏たちです。(持国天、増長天、広目天、多聞天)

■韋駄天
シヴァ神の次男で、不老の生命を有すると信じられていました。仏教に取り入れられてからは、伽藍の守護神と考えられています。

天部の神様は、如来や菩薩と言った仏様とどのように違うのでしょうか。

仏法の守護神(仏教という宗教の教え自体を守る存在)
仏様の守護神
仏様だけではすべての人を救うことは難しく、天部の神様はそれぞれのご利益を持って衆生を救ってくださる
元々仏教の神だったわけではなく、インドの神様だった場合がほとんど
仏様によって悪い存在だったが、福の神になった神様もいる

天部は神様ではありますが、如来・菩薩・明王の域には達していないとされ、六道では私たち人間と同様、苦しみ悩むこともある存在です。