蓮の花の意味するものは?

この記事は約2分で読めます。

仏教において蓮の花は、さまざまな場面に登場します。では、そこにはどのような特別な意味が込められているのでしょうか。

「極楽」といえば、必ずといってよいほど蓮の池が描かれます。また「一蓮托生」「妙法蓮華経」など、仏教には蓮にまつわる言葉が多く見られます。

仏教学者・花山勝友氏によれば、インドで蓮はもともと非常にポピュラーな花であったことに加え、次のような理由があるといいます。

蓮華(れんげ)が経典の中でしばしば用いられるのは、泥の中に根を張り、濁った水を通って茎を伸ばしながらも、水面に咲く花が清浄無垢であることによります。これは、煩悩(クレーシャ)に満ちた穢(けが)れたこの世において、〝さとり〟を得ることを象徴しているのです。

数ある蓮の中でも、特に「プソダリーカ〔音写して分荼離迦(ふんだりか)〕」と呼ばれる白蓮華が、清浄の象徴とされています(『人は死んだらどうなるか』より)。


「ひつじぐさ」との名の由来

ところで、蓮に似た水草に「ひつじぐさ」という名があります。
これは、昔の時刻の数え方で「未(ひつじ)の刻」(午後二時ごろ)に花を咲かせることから、この名が付いたといわれています。
実際には午前十一時ごろに咲き始め、夕方四時ごろにはしぼんでいくそうです。


蓮の花のいのち

蓮の種類は世界で三百数十種にのぼります。
その花の命はわずか四日間。

  • 一日目:朝六時ごろから開き始め、蕾がふくらんだお椀形に咲く。やがて閉じて再び蕾に戻る。
  • 二日目:暗いうちから開き始め、深皿状に開く。この日が最も美しいとされ、見ごろは朝九時ごろまで。午後にはまた閉じる。
  • 三日目:さらに大きく開き、花びらの下部が水平になるほどに。色も少しずつ褪せていく。
  • 四日目:朝に開いた後、徐々に花びらが散り、午後にはすべて落ちてしまう。

何と潔いことでしょう。
花びらが散ったあとには、中央の蜂巣(はちす)だけが残ります。

こうして一つの花は三度咲き、やがて水中に沈んで実を結ぶのです。


蓮の花に祈りを込めて

泥の中から立ち上がり、清らかな花を咲かせる蓮。
その姿は、煩悩に満ちた世の中にあっても、清浄な心を保ち、悟りを得ようとする人間の理想を映し出しているのかもしれません。